「だが人間は、その一握りの鬼の悪事を鬼そのものの悪事としてでっち上げ、俺たちの討伐へと動き出した」



鬼羅から紡がれる真実は、残酷で千代の心を痛めた。
静寂な小屋の中に、鬼羅の声だけが響いていた。



「その流れの中、鬼頭城の城主となったのが影正だ。・・・影正は鬼狩りと称して家来を連れてはこの森に入り鬼たちを殺していった」

「・・・っ」

「その中には、琉鬼の幼い妹も。俺の親もいた」




痛々しく紡がれていく真実に、こらえきれない涙が伝う。
泣くなんて卑怯だと。
それは、自分の父親が関わっている現実なのに。
千代は何度もその手で涙を拭い、鬼羅の言葉の続きを漏らすことなく聞こうとする。




「人間が正義か?鬼は悪なのか?なぁ、教えてくれ」

「・・・っ、ふ、・・・っ。ごめ・・・さい・・・」

「泣いてほしいわけではない。同情などいらぬ」

「わかって・・・ます・・・」




わかっているが、止められないのだ。
無条件に正しいと思っていた父。
愛を注いでくれる優しい父。

でも、それは自分だけに見せている姿だったのだ。


知らないところでは、残酷で残忍。
そんな姿を知りたくはなかった。