千代が目を覚ましたのは、鬼羅の小屋の中だった。
千代の身体には、鬼羅の来ていた濃紺の着物がかけられている。
「・・・鬼羅・・・?」
辺りを見渡してみるが、小屋の中に鬼羅の姿はなかった。
頭がくらくらする。
頭の中に靄がかかったようにボーッとするのだ。
しばらくして、扉の開く音がすると鬼羅が戻ってきた。
「目が覚めたか」
「鬼羅・・・。私・・・」
「これに着替えろ。その着物は濡れている」
乱暴に投げられた着物。
千代はゆっくり体を起こそうとするがフラフラしてうまく起き上がれない。
それを見た鬼羅は小さく舌打ちをすると千代の背中に手を差し入れゆっくり起こした。
「ありがとう・・・」
千代が鬼羅を見るが、鬼羅は目を合わせようとしない。
「早く着替えろ」
「うん・・・」
震える身体を押さえながら、着物の帯を外す。
鬼羅はそれを見て立ち上がると背中を向けた。


