鬼姫伝説 Ⅰ




無情にも雨は降り続き、千代の着物はすっかり水をたっぷりと吸い込んでいた。
千代は、立っていられなくなり座り込む。

16年ずっと城の中ですごしていた千代にとってこの数日の冒険は確実に体力を消耗させていた。


その上、思い悩むことも多く、なんの苦悩もなく過ごしてきた千代にこの数日はとても苦しいものがあった。
その上のこの雨。

千代の体力を奪い、意識を混濁とさせていく。




「鬼羅・・・」




囁くように呟かれた言葉を最後に、千代は意識を手放しその場に倒れ込んだ。
雨は倒れた千代の身体に容赦なく振り続ける。



千代が倒れた時の音に気付いたのは、小屋の中で思いにふけっていた鬼羅であった。
とうに自分の在るべき場所に戻ったと思っていた。
千代の話も聞かず切り捨てるように置いてきたのだ。
それが当然だろうと。



何かが倒れる音に気付き、そっと小屋の外を覗き見る。




「・・・・!」




そこで見つけたのは、小屋の前、さっきと同じ場所に倒れこんでいる千代の姿だった。
千代の身体に打ち付ける雨。
鬼羅は目を疑った。