「鬼羅・・・、お願いします。あなたの、苦しみも憎しみも、恨みも・・・。すべて私に教えてください。もう、なにも知らないままは嫌なのです」

「お前に話すことなど」

「鬼羅・・・」

「お前に話すことなど何もない」




鬼羅はそのまま千代の横を通り過ぎ小屋の中に入ってしまった。
残された千代は、立ちすくんだまま。

届かない言葉。
届かない想い。



それはもっともだと。




「もう・・・、鳥籠の中にいる鳥でいたくないの・・・」




羽ばたきたい、もっと外へ。
どんなに苦難が待ち受けている外界でも。




「鬼羅・・・」




雨は大粒。
千代の身体を無情にも冷やしていく。
それでも千代はその場を動けずにいた。