「ちぃちゃん、なんでそんな泣きそうなの?」



千代の顔を覗き込んで気づく。
思い詰めたような顔をしていた。




「鬼羅を・・・怒らせてしまいました」

「鬼羅を?怒らせてって、鬼羅はいつも怒ってるだろ?気にすることないよ?」

「ですが・・・」




余計なことを言ってしまったのだと。
琉鬼は、千代の背中に手を添え近くの木の幹に座らせる。
その向かいに自分も腰を下ろして千代と目を合わせた。



「ちぃちゃんは、俺たちが怖くないの?」




それは、初めて会ったときにも聞かれた質問だった。
千代は、ゆっくりと唇を開いていく。



「怖くなんて」

「はじめ、言ったよね?俺、喰ってもいい?って」

「あ、・・・はい」




初めて会った瞬間の事だ。
千代を組み敷いた琉鬼が言った一言。
千代は確かにそれを思い出し、小さく頷いた。