「鬼羅は、笑っていた方が素敵です」

「・・・バカなことを言うな」

「本当です!」



すぐに表情を硬くさせる。
千代は鬼羅の顔を覗き込み、じっと見つめる。
居心地悪く視線をそらすが、その視線を追うように千代は体を移動させる。




「どうして、いつも怖い顔をしているんですか?さっきみたいに、笑っていた方がずっと楽しいです」

「楽しいなど、そんな感情はいらん」

「なぜです?そんなの・・・」

「黙れ。人間の感情を俺に押し付けるな!」




拳を強く床に叩きつけ怒鳴りつけた。
ビクッと肩を震わせ、悲しそうに眉を寄せる。
居たたまれなくなり鬼羅は立ち上がりその部屋を飛び出した。


残された千代。
先ほどまでは穏やかな空気であったのに。
初めて鬼羅の笑顔を見て、すごく嬉しかったのに。




触れようとすれば、すぐに遠ざかってしまう。





それが鬼と人間の距離なのか。
鬼とは、いったいなんなのか。




千代には、わからなかった。