「行くぞ」

「え、あ、はい!」




千代は慌てて立ち上がる。
琉鬼に渡された布を自分でおでこにあてがう。

鬼羅は黙って歩き出す。




「琉鬼さま、ありがとうございました」

「いいえー。じゃあね、ちぃちゃん」

「はい!また!」





琉鬼と別れを告げ、千代は鬼羅の後をついて歩き出した。
足場の悪い森。
歩き慣れている鬼羅と、慣れていない千代。
その差は開いていく一方だ。


送ってくれるつもりがあるのだろうかと千代は思う。




「はぁっ、お待ちください、鬼羅さまッ!」




息が切れ、足がもつれる。
声を上げるとようやく鬼羅は止まった。




「鬼羅でいい。さま付けなんて慣れていない」

「え・・・、き、鬼羅・・・ですか?」

「ああ」




ぶっきら棒に言い放つ鬼羅に、千代はにっこりとほほ笑んだ。