鬼姫伝説 Ⅰ




「鬼羅、残念だけど俺たちの負けだよ」




成り行きを見守っていた琉鬼が、ようやく口を開く。
ニコニコと笑い、口に弧を描いて千代を見た。




「ちぃちゃんだっけ?」

「はい。千代です」

「残念だけど、村の人たちが言っている化け物は、本当に俺たちの事だよ」

「え?そうなのですか?でしたら、村の人たちは勘違いをしているのですね」




純粋な、綺麗すぎる心を持っているのだと。
麗しい容姿と、綺麗すぎる心。
いったい彼女は、何者なのだろう。
二人は顔を見合わせる。




「勘違い・・・どうかな。あいつらは、本気でそう思っているからね。それに、本当に恐ろしい化け物かもしれないよ?」

「まあ・・・!でしたら、わたくし戦わなければならないのですね!」

「戦えるの?」




拳を握り体の前につき出し構えた千代を見て、クスクスと笑いながら琉鬼が尋ねた。
まるで殺気もなにも出ていないその構え。





「何事も経験です。精一杯戦います!」

「そ」