化け物、人間はこぞって自分たちをそう呼ぶ。
そんな事にはもう慣れた。
「お前は、なにを見てるのだ」
「はい?」
「その化け物といわれているのは、俺たちだ」
素っ頓狂な少女に、正直にそう告げる。
千代は不思議そうに目を丸くさせそのまん丸の瞳で鬼羅を見つめた。
「あら、違いますよ。だって、その化け物はとても恐ろしく凶暴らしいのです。鬼羅さまは決して恐ろしくなどありませんわ」
「恐ろしくない・・・?お前はこのツノを触っただろう。人間とは違うこの姿を見ているだろう」
苛立ちを含めた言葉を投げつける。
この姿を見、触れたうえでそんなことを言う千代を信じられなかった。
そんなわけないと。
バカにするな。
騙されるものかと。
どうせ、本当は化け物だと思っているくせに。
どうせ、自分に殺されまいと必死で繕っているくせに。
「違う?どこが違うのです?私と同じ、目は二つで鼻も口も一つずつ。耳の形は違うけれど、顔の横に同じようについてます」
「お前には角はないだろう」
「ええ。それだけが残念です。そんな可愛らしいツノ、私も欲しい・・・」
心底残念そうに呟く千代に言葉を失った。


