「いい加減にしろ。俺たちについてくるな。わかったか」
「いやです」
「は?お前、馬鹿か?」
鬼羅の額に青筋が増えていく。
しかし、それ以上言っても伝わらないことは今までのやり取りで気づいていた鬼羅は諦めたように深い息を吐いた。
「なにが目的だ?」
ドカッと木の幹に座り、頬杖をついて千代を見やる。
木々の間から差し込む光が、鬼羅の真っ白な髪を照らしていた。
「杏が言っていたのです。森には化け物がいると。村の者も言っておりました。おっかない化け物がいるのだと」
引き起こされた体勢のまま、座り込んだ状態でも気にせず話し始める。
琉鬼は鬼羅と少し離れた場所に同じように座り込む。
「その化け物とやらを、鬼羅さま方は知ってますか?」
真っ直ぐに投げられた言葉に、言葉を失う。
この娘はいったい何を言っているのか。
どう考えたところで、その化け物は確実に自分たちの事だ。
そんなことは、誰が見てもわかる。


