自室の窓から城下を眺める麗しい姫がいる。
退屈そうに頬杖をつき城下の様子を伺っている。



「あー、退屈だわ」




ここは、小さな小さな小国。
勢力争いには無縁の、小さな国だ。

鬼頭城と名付けられたその城にその姫はいた。



姫の名は千代。
鬼高家の娘として生まれた千代は、その姿はとても麗しくそれはそれは大事に育てられた。





「姫様、そのようなことをおっしゃってはなりません」

「あら、どうして?私はずっとこの部屋に籠りっぱなしなのよ?当然の気持ちじゃないの」




千代はふくれっ面でそう言うと側にいた侍女の杏に視線を向けた。
杏は困ったように視線をそらす。

こういったやり取りは毎日の事だった。



千代の父でこの城の主でもある影正は、とても心配症で千代を外に出すことを嫌がりこの城に閉じ込めるようにして大事にしてきた。
16になり、好奇心旺盛の千代はそれが不満だった。


この部屋から見える城下に一度でいいから降りてみたい。



キラキラと輝いて見えるあの場所に行ってみたい。




そんな気持ちが日に日に募っていく。