平日の公園 隆史は誰かを待っていた。
「メンタルトレーナーの柳田です。よろしく」隆史は知り合いのコネでトレーナーに出会った。
柳田は短髪で背が高く 男でも憧れてしまいそうな好青年。
「早速ですが、歩きながらお話しましょう」柳田に対して 頭を下げた隆史は歩きながら、これまでの経緯を話した。

「それは大変お辛いですねえ」柳田は相槌を打ちながら隆史の表情を目に止めた。
隆史は自分の気持ち不安を初めて他人に話せて少し清々しかった。うつという孤独に打ち克つには1人では無理だった。
柳田とのセッションを終えて、隆史は久しぶりに街へと出掛けた。
立ち寄ったファーストフード店に入りアイスティとハンバーガー、ポテトを食べた。窓から見る街並みはいつもと変わらず、隆史だけが何故か違う世界にいる気がした。

明日は面接だったな。履歴書用意しなきゃな。
今転職活動をして良いか分からないが、進まず現状でいる方が辛かった。


「青木隆史 さん。どうぞ」

失礼致します。宜しくお願い致します。
面接官は50半ばの課長風の男性だった。
「まずわが社を選んだ理由は?」

はい、近年の御社の目覚ましい海外進出を拝見致しまして、非常にやりがいのある仕事が出来ると感じました。これまでの営業経験を是非御社で活かして行きたいと願っております。
「この 第山倉庫 株式会社は何故短期で辞められましたか?」
鋭い質問が来て隆史は少し動揺を隠せなかった。

はい、第山倉庫では主に仕分けの仕事をしておりました。同時に商品管理もしておりましたが、激しい積み降ろしで腰を痛めまして、辞めることとなりました。
「そうですか では何か質問ありますか?」
はい 御社の海外推進事業部における重要な仕事内容をお聞かせ願います。

「海外推進事業部はまだ新しい事業部でして、やはり新しい奇抜な案を提案して貰いたい。そして、それを実際海外で実践出来るか練り直す仕事も重要ですね。」
ありがとうございました。

面接が終わった。緊張していたせいか喉が渇いた。

部屋に着くとリックが玄関まで来ていた。
おおリック 待ってたか 散歩行くぞ。
隆史はスーツからジャージに着替えてリックと部屋を飛び出した。
面接が終わり少し安堵の気持ちが沸いてきた。自分がうつではないと錯覚しそうだった。でもうつは生易しいものではなかった。隆史はうつの本当の苦しみを知ることとなる。