うつですね。医師からそう言われた。やはり仕事の量が半端なかったからなのか。とりあえず休めってことだな。ああただでさえ金がねえのに仕事休んで食っていけるかな。
お薬もらって帰ってくださいね。ふう、薬まで飲むのか。いよいよ終わりだな。
隆史は疲れきった頭を風に吹き付け、取り除きたくなった。今まで悩みなんてなかったのに、ここにきて深く思い悩むことが多くなった。仕事の限界、人間関係全てが面倒になってきた。 ああ何か楽しいことねえのかな。頭が鬱々として仕方ねえぜ。キャバクラでも行きますか。おいおいうつ患者がキャバクラ行ったら薬要らねえんじゃねえと言いつつ帰路に着いた。
部屋には愛犬リックが待っていた。 腹をすかせたなぁ リックたらふく食え。
冷蔵庫にあった豆腐にかつおをかけてご飯と一緒に食った。食後の薬も忘れず飲んだ。妙に疲れている。体がだるい。ゆっくりと横になった。

明け方夢をみた。いつも金魚が出てくる。どこかの街の宴会を通路を歩いている。夢だと気付くとうすらうすら目覚めてきた。

そう言えば今週面接だったな。転職したくて応募した商社だ。スーツの準備しなきゃ。外は煌々と明るくなる。


それにしてもうつとうしい。笑い声が隣から聞こえる。俺はこんなにも苦しんでいるのに、何が可笑しいんだ。涙が出そうになるくらいで体はだるく辛い。これがうつてものだが、毎日こんなに辛いとは思っていなかった。
隆史は若干腹立たしさを感じていた。どうして自分だけがという苛立ち そしてこれからどうなるかという焦り… 今日は休日だけど、特に用事はない。リックを散歩に連れて行くくらいだ。

しかし仕事のことを考えると不安で仕方ない。何が不安か。仕事に行くのが不安であり、このジレンマ、思考がこの上なく苦痛なのだ。やっぱり仕事を辞めようと考えてしまう。いつも最悪のシナリオが頭をよぎる。隆史はもう復活出来ないのではないかと大きな不安を抱えてしまうのであった。いっそのこと死んでしまおうか。そんなことも頭を過った。

でも死んだところで誰も喜ばない。年老いた両親が悲しむだけだ。隆史は我に返りながら生きていく決心を固めた。何が何でも生きてやろう。そう もう失うものなんてないんだ。