【好きだから別れて】

迷いを振り払らい、イジワルまじりなメールを送るのが精一杯で。


その反面、自分の存在をひた隠しして、悠希を迷わせてみたくて。


『さぁ~どうかしら。いひっ』


「本当は歩だよ」そう送ればお前は可愛いい奴だなで済むのに、半信半疑な答えで目眩ましさせる。


悠希に


変わってしまったあたしを見られたくない。


他人の嫁になった「あなたの者」じゃない歩を見ないで欲しい。


そんな気持ちがあったのかも知れない。


メール受信:悠希


『嘘つけ。あれは絶対お前(爆笑)一発でわかるっつの。俺が間違えるわけねんだぜ♪つか歩、髪伸びたな!』


けど悠希にはお見通しで…


完璧にバレてるのに、無駄な抵抗をしてあたしって本当に馬鹿過ぎる。


付き合ってる時からそうだったね。


二年も時が過ぎてもやっぱり結局、悠希には何一つ勝てやしないんじゃん…


『うっさいなぁ~歩に似ためっさ可愛い女子だったんじゃね?勘違いかますとかお前失礼過ぎるし。髪ショートショート。長くない』


悠希が悪いんだよ。


勝手に歩を見付けて、勝手にチェックして。

勝手に優しくして、勝手に惚れさせて、勝手消えてって。


悠希が悪いんだよ。


だから意地悪するんだ。


許さないんだから…


ピンクの服と長くなった髪。


悠希。


カラオケ付近にいたのは間違えなく歩だよ…


暗闇はより一層辺り一面を色濃くし、悠希と出逢った季節を蘇らせる寒さが外に流れる。


脂肪がすんなり落ち、痩せたせいか車内にいても感じてしまう肌寒さ。


エアコンの風を強風にして光までちょうどいい温もりが届くよう、あたしはスイッチを押した。


二人が別れた後から気にしていた悠希の現在。


タイミングは今で、こんな時しか聞けない話がある。


悠希に彼女がいるのか。


支えはあるのか。


そして、これを聞いたらあたしの心に変化はあるのか。


『悠希は最近どう?彼女できた?』


文をすんなり作るが、送るのを躊躇してしまう。


聞いたらどうなるのだろうか。


悠希に彼女がいたら嫌いになれるのだろうか。


でも聞きたい。


どうしても知りたいんだ。


あたしは乱れる心のまま悠希にメールを送信した。