【好きだから別れて】

返せるならとうの昔に返せてる借金。


でかい口を叩いたわりに真也との借金と関わり約二年に突入するが、利子ばかり払って元金はほぼ無変動。


どうせなら光が産まれる前。


いや。


あたしに関わる前に綺麗に精算しとくべきものだ。


「いい加減にしてくんない…」


「何が」


「おとなしく引き下がりゃ偉そうにしゃべりやがって。返せるだ!?だったら十代ん時にさっさと返しとけよ!おめぇは性根が腐ってんだな!」


「俺ぐらい稼いできて赤字になんのが変だろ!歩のやりくりが下手なんじゃね!?つかお前が稼げばいんだろ!友達の嫁なんか産んですぐみんな稼ぎに出てんだっつの!」


「はぁ…こっちに責任転嫁。話になんねぇ。マジ一回死ねば?」


いつも一人で留守番をさせられ寂しい思いを人に伝えられず育ってきたあたしには譲れない。


我が子には寂しい思いはさせられない。


嫌がられても煙たがられても近くで一緒に同じ毎日を送り、食卓を囲むんだ。


真也がイエスと言わなくても小さな光の元を離れない。


こんな幼子を置いて真也の借金の為に犠牲になりたくないし、光に犠牲をこうむりたくない。


あたしは寝ている光を気にしつつ言いたいことを言い切り、その願いが打ち砕かれたと同時に真也にもう話す必要はないと背を向けた。


「お前ふざけんなよ!」


そう真也の叫び声が背後から聞こえた瞬間、大きな音と共に近くに置かれた冷蔵庫へ拳の跡が刻まれた。


「調子のりやがって!なめんのもいい加減にしろよ!」


「な、ちょっと何してんの!!」


二人の争いでおさまる話なのに、眠る光の近くにドカドカ足音を立て歩いて行く真也。


感情的になって弱者の光に何かしでかすかもしれない。


骨を折られたり床に叩きつけられたら取り返しがつかず、何もかもが終わりだ。