【好きだから別れて】

~20XX年3月3日~


役所に婚姻届を提出し、あたしはこの日。


二人目の夫、真也の妻になった。


妊娠初期のお腹はまだまっ平らで膨れていない。


ながらも、間違いなく命の鼓動は波打ってこのダメな母の元で懸命に生きてる。


真也に少しでも情があるのかといえば情すらない相手。


あたしはそんなどうでもいい人間を夫に選んだ。


互いに相手を深く知りもせず、互いの好きな色や趣味すらわかりあわずにした結婚。


智也との一度目の結婚よりたちが悪い。


したたかな女に騙された可哀想な真也。


真也は何も知らず、紙切れ一枚に人生を託す…


あたし達二人には蓄えがなく、握り締める程度のいささかな金しか財布に入っていない。


そんな二人が一緒に住むには当然越えなければならない困難が付きまとい、結果、母に甘えるしかなく、あたしの実家にお世話になる流れになった。


真也の両親も出入りのない他人の娘がいきなり住むとなれば不愉快だろうし、ガンをわずらわせているだけに今こられても邪魔なだけだ。


とりあえず真也の両親との同居は保留にし、出逢いを含め4ヶ月の猛スピードで新婚生活をスタートした。


そして、あたしの部屋に着替え程度の荷物を持ち込んだ真也との新婚生活は始まったんだ。


まばゆいスタートをきった訳でもなく「出来ちゃったんで仕方なく一緒にいます」なあたし達の新婚生活は「いってらっしゃいのキスは?」なんて甘々な関係とは程遠くて。


話せば話すなり互いに嫌な部分しか見えてこない。


他人同士が同じ屋根の下で暮らすとなれば仕方がないのかもしれないが、そうなれば喧嘩が絶えないのも言うまでもなく。


お腹の赤ちゃんに気遣いされたり妊婦扱いなんかされず、真也は自分の我を押し通してくる。


出産費用さえないのに真也は勝手に車を買い、月8万のローンをくんできたり、趣味の釣りやアウトドア用品買ったり。


時には理由をつけて出掛けたりする。


第三者目線でのささいな喧嘩かもしれない。


があたしには理解不能な行動にしかうつらなくて…


小さな喧嘩が発端となり、次第に大喧嘩へ発展して終いには罵倒されるようになっていった。


ことの発端はあたしとの会話のひとこま。


なぜ真也と結婚したのかを問われ、本心を口にした事だった…