【好きだから別れて】

帰宅して時間がたっても真也に対する腹立たしさは落ち着かなかった。


あの態度は許せない。


アイツが父親なのも許せない。


メールで一応妊娠報告はしても自分の子で真也の子なんて感覚が降りては来ず、真也に話すのが面倒で仕方なかった。


がその夜。


逃げる訳にはいかぬ現実と向き合う為、家に来た真也に病院へ行き、赤ちゃんが間違いなく出来ていたとエコー写真を手渡し話した。


「あたし産むから」


産む決意をハッキリ伝え、どんな反応が返ってくるのか。


これで真也がどんな男なのか化けの皮が剥がせる。


喜ぶのか逃げるのか、出方で流れは変わる。


「あぁん」


相変わらず反応は薄く、感情がない人形を相手にしてるみたいで喜んでいない様子にしか受け取れない。


もういい。


許さない。


真也の反応が気にくわなくてあたしは


「嬉しいとか嬉しくないとかないの?命はもう芽生えてるのに!」


激しく詰め寄り、怒鳴りつけ怒りをあらわにした。


「嬉しいに決まってんだろ!」


「じゃなんだよ!昨日といい今日といい腐った返事しやがって。てめぇ調子のんな!」


「出来てる気はしてたけどちゃんとわかってからじゃねぇと喜んでいいかわかんねぇだろ!」


「あ…そう…」


急にムキになる真也は目があうとそらし、力なく呟いた。


「二人で育てような」


スッと手が伸びてきてビクつくと、あたしの髪を触りながら恥ずかしそうにはにかんでいた。


「親に言わなきゃ」


「それって…」


「籍いれなきゃいけねぇじゃん」


プロポーズなどにはほど遠い言葉。


だが、ぶきっちょな真也なりの精一杯のプロポーズだったはず。


「あたしもちゃんとしたいし」


愛だの恋だの甘い雰囲気で始まった付き合いではない二人。


親の資格がないに等しい二人。


でも、もう後戻りはできない。


真也と家庭を築き上げていくんだ。


悠希じゃない男と…


この日から二人でお腹の子を育てると決意し、新たな人生のスタートは始まりだしたんだ。


あたしの人生の隣には真也がいる。


愛のない男との二度目の偽り婚…