【好きだから別れて】

ほぼ間違いなく、お腹に赤ちゃんはいる。


好きでもない男の赤ちゃんがこのお腹に…


「真也。赤ちゃんいるみたいなんだけど」


検査薬を見せ、自然と震える声で結果を伝えたら


「あぁ。出来てたか」


あまり嬉しくなさそうな表情を真也は浮かべていた。


それはそうだ。


こんないとも簡単に子供が出来ましたなんて男視点でいけば非現実の世界だ。


「医者行ってないし、まだ100%じゃないけどさ」


「んじゃ医者行ってこいよ」


「えっ、歩一人で行くの?」


「俺、仕事あるし」


「あっ仕事…だよね…」


検査薬を見て「おめでとう」なんてすんなりいくわけもなく、赤ちゃんがお腹にいる実感も全くなく、無責任な二人は今起きている現実にただただ戸惑っていた。


「一応お腹触ったら?」


「出来てるかわかんねぇじゃん」


「いや、ほぼ確定だよ。これ90%以上の確率とか書いてあったもん」


「んなわかんねぇじゃん。医者じゃねんだし」


かたくなにお腹へ触れようとしない真也は、真っ向から妊娠を否定している人染みててあたしはあっけにとられた。


感情を表現するのが下手な奴だとわかりだしていたが、こんな時くらいはさすがに笑顔を見せてくれてもいいのに。


出来たのがそんなに嬉しくないのだろうか。


「まっいいや。あんたに言ったところでどうこうなるわけでもないしね」


「何、その言い方」


「はっ?知らね」


「俺が嬉しそうにしないからか?」


「知らねって言ってんだろ。てめぇで考えろや」


赤ちゃんが出来れば喜ばしい雰囲気になるだろうが、喧嘩になってしまったあたし達。


無責任男と無責任女の成れの果て。


なんかこんな男といる自分が馬鹿らしく感じてきて、あたしは真也に帰宅をすすめた。


「早くね?」


「最高具合わりぃんだよ。横なりてぇから帰ってくんない?」


「なら仕方ないけどさ…」


「喜んでくれなくてムカついたんで帰って下さい」が本音なのに、あたしは具合のせいにしてとにかく帰ってもらう方向に持ち込んだ。


納得いったかいかないかなんて知らない。


ただ真也は不機嫌な態度で部屋を後にし、その数分後『明日気をつけて病院行ってこいよ。結果わかり次第メールすぐちょうだいな』とメールだけをよこした。