こんな男嫌い。


なんてことない。


ちょっと見直しただけ。


ちょっと悠希と優しさが似てただけ。


ちょっとだけ…


なのに重なった部分が大切な物だったから自然と心を許してしまい、気付かぬうち悠希を思い出し、ついあたしは話してたんだ。


「つかさぁ話飛ぶけどいい?」


「うん。いいよ」


「あたしさ、すごく好きで好きでたまらなかった彼氏に振られて気持ち落ちてたの。だから合コンして気晴らししたかったんだ」


黙り込む真也を気にせずそれでも話を続けた。


「でね、彼は東京に行っちゃって戻ってくるかもわからないの。電話かけるって言われたんだけど音信不通になっちゃってさ。ん~なんていうんかなぁ。結局全てあたしが悪かったんだ。彼を傷つけたの」


「んなグチグチしても仕方ないじゃん。別れたんだから」


真也は表情を変えずにあっさり話し、オーディオのボリュームを下げる。


「そうだね…完璧終わったんだよね」


「別れたら次を見るしかない。終わったんだし」


「次かぁ」


「そう。違う恋」


「へへっ…年も年だし次付き合う相手は結婚相手なんちゃって!ははっ」


涙が出そうだったあたしは涙を悟られたくなくて冗談まじりに笑ってごまかした。


悠希が恋しいなんて認めたくない…


「ふぅん。そっ」


真也は変わらずそっけない態度で返事すると、会話を弾ませず車を走らせた。


自分でもわからない。


心を一瞬開いてしまった意味が。


~家族を大事にする~


悠希と重なってしまう家庭の事情。


でも真也は悠希なんかじゃない。


似ても似つかない別の人。


「ごめん。今日調子悪いし時間も時間だから帰ろう」


「わかった。今すぐ家まで送るよ」


それから静寂の車内は家の近くまで続き、共に無言で違う空間にいるみたいだ。


通わない心。


あたしは真也と合わない。


どうあがいても性格も見た目も雰囲気も合わないし、二人を繋ぐ糸なんて存在すらしない。


「またメールするね」


「うん。送ってくれてありがとう。じゃあね」


そしてその日。


車を家の近くに止めてもらいすんなりバイバイをした。


男女をいっさい匂わせず、一人の人間対人間として会話を終了させたまま…