真也っていう人間はさりげなく「いい奴」なのかもしれない。


内情や家庭環境は聞いてみないと何もわからないし、理解しようがない。


はためでは遊んでそうないでたちの真也。


一方的な思い込みとはいえ勝手に「嫌な奴」にしていた自分が若干情けない。


真也には真也なりの事情があったのに。


コイツはコイツなりに悠希同様、家族を守ってる…


「家族は大事にしなきゃ…いけないみたいよ」


「そらそうでしょ。まっ、俺しか金稼げねぇからしゃあねぇんだ!親父には生きてて貰いてぇし、いなくなられたら困るしさ」


伝わってくる真也の優しさが無性に胸に響いて痛いくて。


喉元がつまりかぁあっと熱くなる。


言葉を選んで話さなきゃ真也は傷ついてしまう。


何を話そう。


何を伝えよう。


突っ込んで家庭の事情を聞き出したくなくて、出てきた言葉は優しくも何ともない言葉だった。


「あのさ」


「ん?」


「どんまい自分」


「はっ?」


「どんまい自分だっつの」


「あっ?あぁ~ありがとう」


あっけにとられた真也は一瞬言葉に詰まったが、当たり障りないそれなりの返事を返してくれた。