「京介さんは京介さんでやべぇけど俺、歩ちゃんの地元にたむろってたから結構知り合いいるよ」


「マジで?んじゃ知り合いの名前言ったらわかったりしてね」


「可能性あるよ。言ってみて」


いきがってた高校時代に付き合った彼氏や同じ中学出身のヤンキー友達。


年中家に遊びに来てた後輩や鑑別所に行った知り合い。


傷害事件ばかり起こしてた悪友や元旦那繋がりの友達。


何人かそれなりに名前の売れた奴をリスペクトして伝えてみる。


「やべっ、マジ知ってる!あの人すげぇ暴れてたよね!」


「○○さん、バイクめちゃくちゃ高い奴で改造しまくってたじゃん。カツアゲした金で買ったらしいけど」


「結婚して子供いるって聞いたと思ったら最近離婚したってさ」


息つく暇もないスピードで誰もそこまで聞いてないって内容を一方的に話し続ける真也。


これでもかって押してくる。


共通の知り合いが余程嬉しいのか目を細め真也は笑っていた。


しゃべれない奴がやたらしゃべると気持ち悪い。


あたしはギャップの激しさにあっけにとられてしまい「あ~そ~」と何度も口にしていた。


会話は終わらず火がついたしゃべりは止まらない。


何の拍子にずれたのか話の方向はまったくの別物になり、家族の話へ流れていった。


「つうか話だいぶへし折るけど、真也君は家に金いれてるの?」


「俺?俺は親に給料一回全部渡すんだなぁ…」


「えっ?なんで?それじゃ稼ぐ意味も楽しみもなんもないじゃん」


真也の身なりでは想像つかない発言。


家に入れるどころか全部そう取りしてくだらない遊びに使ってそうに見えるだけに驚きを隠せない。


意外と真面目なのか?


「じつはさぁ…うちの親父胃ガンになってさ。母ちゃん馬鹿で働いてねぇし俺が支えなきゃいけないんだなぁ」


「ガン!?えっ、ガン!?」


「胃切るらしくて金かかんじゃん。って言っても俺の親父、血繋がりないだけどさ。母ちゃんと再婚したくせ俺いるからって自分の子供作んねぇで俺を可愛がってくれたんだよね」