【好きだから別れて】

慶太は改めて身に纏っていた服を荒々しく脱ぎ去り、唇を合わせあたしの服を一枚一枚器用に剥ぎ取った。


手が素肌をまさぐり口内に舌が優しく滑り込んできて、緊張から慶太の舌を噛んでしまいそうだ。


時折香る甘いイチゴ飴とタバコ香が可愛さを匂わす。


五つ年上の肉体。


自分好みの背丈に締まった腰。


完璧過ぎる…


あたしは抑えきれなくて慶太の首に腕を回し、身を引き寄せ、受け入れ態勢を整えた。


慶太が上で動くたび徐々に記憶が薄れてく。


温かな体温が身をよじらせ、緊張を快感に変える。


悲鳴に近い声をあげ、女になっていく自分。


なんなの?この気持ちは?なんなの?あたしが人を好きだって?笑わせないでよ。でもね…でもね…好きなんかも…


霧のかかった頭に浮かぶひねくれた自分と素直な自分が交差する。


乱れた髪を右手で掴み、イキそうになるのをこらえては唇を懸命に噛んだ。


そして、この日。


二人は彼氏と彼女という契約の元、一つになったんだ。


カーテンを締め切った薄暗い部屋で互いを確かめ、交わっていく。


堕ちて


堕ちて


堕ちぬいて


歩は慶太の女になったんだ…