【好きだから別れて】

真也は一体何を感じたのだろう。


メールした日を境に心境に変化があったのか、毎日メールを送ってくる。


仲がいいとか話題が弾むとか趣味が被るとか、そんなものすらない薄っぺらい関係。なのに


『何してる?』


『いつ会う?』


真也は男臭を放ち、とことんメールを連ねてくる。


悠希しか頭になかったあたしは、男とのつきあい方や駆け引きなんてすっかり忘れ「恋愛」すら忘れていた。


いや。


異性を忘れていた。


『電話していい?』


興味のない人間のメールや通話などなんとも思わない。


もて余した時間と暇潰しに使える相手が真也なだけ。


あたしは考えもせず、即返事をした。


『いいよ!OK』


求められてるからなんとなくそれにこたえ、メールに携帯番号を入れ真也に送信したら、知らない番号の着信が鳴った。


「もしもし。真也だけど」


いかつい男のイメージに膨らんでいたのに真逆で真也の声は高くか細い。


認めたくないけど、声だけは好みかもしれない。


男っぽい男が嫌いなくせに…


「あんた声いい感じなんだね」


「そう?」


――コイツの会話は単語かよ


メールはたくさんの文字を敷き詰めてくるのに、会話は続かない奴。

やっぱつまんねぇ人間だ。


「うん。いい声。ってか何した?」


「あのさ。急だけど…明日会わない?」


思いっきり急な誘い。


でも断る理由もないし、仕事が終わったら予定もない。


以前の勢いのある歩は何処かに行ってしまい、暇人もいいとこだ。


「夜だけどいいの?」


「全然いいよ」


「あっそ。んじゃ明日仕事終わり次第メールするわ」


「うん。わかった」


「…ってことで。じゃあ」


たどたどしく話す真也との通話は重たくて会話したくない。


面倒くさくて通話を終了させる方向にもっていき、利点もえられないのになんとなく会う約束をした。