【好きだから別れて】

O型で八方美人なあたし特有の適当な相手に合わせる技。


こんな自分にガッカリする。


嫌いな男に気を使ってる時点で終わってる。


――はぁ…だっせぇ…自分何してんだか。あぁ~イラつく。汚ねぇ部屋でも片付けっかな


心機一転がてら息抜きに散らかった部屋を掃除しだしたら、本と本の間に挟まっている悠希とのプリクラが出てきた。


つい手が止まり、見入ってしまう自分。


全然色あせてないプリクラに、鮮明に写し出された二人の顔が並んでいる。


記憶はいつしか色あせるのだろうか。


時間はあたしの心を癒やしてくれるのだろうか。


涙は全てを消し去ってくれるのだろうか…


――はぁ…悠希何してんだろうな。ちゃんと食べてるかな…


笑顔のプリクラを見て自分に問いかける。


記憶は全然色あせやしない。


体に。


唇に。


悠希の温もりはまだ残ってる。


悔しいくらいしっかりと…


あたしは悠希にもらった化粧ポーチを取り出し、頭上にかかげた。


――毎日触れてるよ。毎日、毎日…


あたしの心には何も変わらず悠希が住んだままだった。