【好きだから別れて】

――ったく…今日はガンガン飲んで歌って気分よく帰ろう。腐れ陸…死ね!


カラオケで楕円形テーブルを囲み、各自好きな酒を注文して乾杯と共に酒を飲み始める。


ガンガン飲むつもりだった酒。


のつもりが日中の仕事で疲れてたのか一杯のビールで酔いが回り、あたしはやたらテンションが上がってきた。


「でさぁ~あの時だいぶウケたわけよ~」


「歩ウケ過ぎ」


「いやいや笑えるっしょ!うひゃひゃひゃ」


「何その笑い方。キッショ」


女友達とビールジョッキを手に話しながらふと横をみると、つまらなそうな男が携帯で歌う陸を撮っていた。


手にしてるのは黒の最新携帯だ。


「んんっ!?」


当時カメラ付き携帯を持ってる人はほとんどいなく、実物を目前にして興奮し、不覚にもつい声を張り上げ食いついてしまった。


「これすげぇ~カメラじゃんよ!見して!貸して!」


「あぁ。いいよ」


「キャー!やべぇ~カメラとかやばくね!!欲し~い」


「…」


「ってかさ、あんた名前なんつぅの?」


「真也(しんや)」


「ふ~ん。真也君。これちょい借りるね!」


「はい。ってか俺トイレ」


相変わらず愛想のない真也の携帯を借り一緒に部屋の外へ出て、使い方を簡単に聞いた。


「まぁこんか感じでここ押せばいいさ」


「あんがと。やってみる」


意外と簡単な操作方法で直ぐに使いこなし、そうこうしてる間に真也はトイレへ行っていた。