【好きだから別れて】

目を見つめ甘えた声を出し、自分なりに精一杯訴えかけすがり付く。


すると慶太の動きはぴたりと止まった。


二人は目を反らさず見つめ合い、部屋は静まり返る。


「……俺、もう我慢出来ねえ」


「えっ、ちょっ…」


慶太の手が体に触れ、床に寝転びもせず着ていた服を下から上へまくし上げられた。


同時に胸のブラジャーも荒々しく無造作に下げられ、恥ずかしがる隙もない。


慶太のなすがままことが運ばれ、抵抗すらできない。


胸に這う生暖かい舌の感触が理性を吹き飛ばしそうだ。


「ああぁ!!待って!」


「あん?ここまできてなんだよ!」


あたしは悲鳴に近い声をあげ、自分を取り戻し必死で阻止した。


胸元に顔を埋めた慶太は途中で止められ不満げに顔を見上げる。


「付き合ってないのにやるのはね…ってか好きじゃないのに慶太は女を抱くの?」


あたしは甘ったるい声を出し、慶太の顔に手を添えじらしながら答えを求めた。


本当はスベスベの肌がいとおしい…


「好きじゃなきゃ会いたいなんて思わないだろ!」


「じゃどうすんの?」


不適な笑みを浮かべ、とことん慶太を追い込み、プレッシャーをかけ続ける。


あたしは欲と欲のぶつかり合いに勝つ自信があった。


今にもやりたい男を生殺しにしたら怒るのも計算済みで、慶太を手に入れる為なら悪魔にだってなれる。


「歩。俺とつきあって」


「ん?聞こえな~い」


「俺とつきあって!」


じらされて限界に達した慶太は返事も聞かず、あたしを床に押し付け体を跨ぎ覆い被さった。


服を剥ぎ取ろうとする手を握り、慶太の動きを止め


「せめて布団でしようよ」


天井を見つめ、小声で囁いた。


「あっ、ごめん」


慶太は飢えた獣のように食らいついていたが、あたしの声で我に返り恥ずかしそうに下を向く。


そんな慶太の手を引っ張り敷かれっぱなしの布団に移動して、あたしは自ら寝転がった。


「つきあったならちゃんとキスして。じゃないとさせない」


「おぉ、わかった」


慶太の顔が目の前にくると自然と目を瞑り、香水の匂いと共に薄い唇があたしの唇に重なった。