【好きだから別れて】

「ああああつつっっ」


身も凍る寒い中。


狂った悲鳴は駐車場に虚しく響き渡った。


悠希に抱えられ病院に入るとたくさんの病人が群れをなし、つらそうにしているのが目に入る。


自分も急患。


なのにこんな時ですら人目を気にし、視線が刺さる気がして仕方ない。


コマ送りに流れる映像が一コマずつ色付く。


「すいません!すいません!」


悠希は看護婦を探してひたすら声をあげた。


「ああああっ!!」


「見るな!!」


白い目を感じたのか悠希は周りに対して怒鳴なり、状況を把握して近寄ってきた看護婦は冷静にあたしの口元に紙袋をあてがった。


「過呼吸だね。焦らない焦らない。ゆっくり息を吸って、吐いて」


「すう、はぁ。すう、はぁ」


ベッドにそのまま運ばれ、紙袋を押さえつける看護婦の手を握り、あたしは必死で落ち着かせようと指示通り呼吸を合わせた。


「今、楽になるからね~痛くないよ。ゆっくりね。ゆっくり。吸って、吐いて」


横になり、看護婦は呼吸に合わせ背中を叩いたり擦ってくれる。


「ここにいるんだよね」


男の低い声が聞こえたと思うと、金属音と共に看護婦と医者が現れた。


「これを打てば落ち着くよ。痛くないからね」


医者は看護婦に手渡されたアルコールを皮膚に塗り、即座に注射を打つ。


苦しくて日頃苦手な注射の痛みすら感じはしない。