【好きだから別れて】

この小学生並に小さな体からどうしてこんな力が出るのだろう。


気付けばソファーから西野君を下に振りおろし、無表情な自分がいた。


「お、俺は歩ちゃんが振り向いてくれないから…だから仕方なく好きでもない女と結婚…」


「だからなんだよ!あぁん!?てめぇ死ぬか!?」


表に出さなかったあたしの本性。


いい子ぶって可愛い女を演じ、そんな姿に惚れてた西野君。


「歩」のあまりの豹変ぶりに本気で何かされると危機感を感じたのか、腑抜けたただの弱っちい男になっている。


男友達にやられて以来。


あたしは男としか殴り合いの喧嘩をしてない。


恨みをはらすかのように何人も血だらけでやりあってきた。


こっちは悪いが慣れてるんだ。


どうすりゃ相手を沈められるかってことを。


気絶した男を笑って柱に打ち続けてた一本飛んだ、イカレてる女なんだ。


残念ながら感情なんてからっぽに出来る女なんだよ…


「わ、わかったよ。ごめん。ごめんなさい!」


「で?」


「か、彼氏と幸せに。本当ごめんな!」


「ざけんな腐れ!!死ねや!」


叫び声をあげたあたしに向かい思ってもいない綺麗事を言い残し、西野君は腹部を抱え急いで外に飛びだしていった。