【好きだから別れて】

押さえつけられた腕。


西野君の手ほどこうとすると


「彼氏いるのぉ~?知ってる知ってる。歩ちゃんなんで俺とつきあってくれなかったのぉ~?」


あきらかにバカにしているしゃべりだ。


そのバカにしている感じがあたしの嫌な過去を引きずり出した。


《やめろ…》


『歩。気持ちいいだろ。はははっ』


『お前感じてるじゃん』


『こんなによがりやがって』


高校時代。


シンナーでラリっていた男友達に犯された過去がフラッシュバックし、その時と重なる。


『ここからぜってぇ逃がさねぇかんな』


『口閉じんじゃねぇよ!ちゃんと舌入れろや!』


『お前が悪いんだからな。好きだって言ってんのにシカトしやがって』


行為は何度も何度も続き、夜から朝方まで体をもて遊ばれた。


乱れた服が散乱した中で唇を噛み締め、口内に広がる血の感触。


上で腰を振り続ける友達が霞んでいく姿。


涙すら出なくて、意識が何度も飛び気絶してた。


殺して。


いっそ殺せよって…


《やめろ…》


いつもの自分と自分では止められないヤバさをもった自分がいる。


目がすわり、生気が飛ぶ。


気付いたらあたしの口調は変わっていた。


「おう、どけ…」

西野君はあたしの変化に気付いたらしく掴む手が緩んだ。


「歩ちゃ…」


自然と足が動き、喧嘩なれしていたせいか腹部に思いっきり蹴りを入れていた。


「ぐふっ」


西野君は苦しかったのか腹を押さえて体が離れた。


《コイツやっちゃっていい…》


頭の中は狂っていた。


抑えられない怒りで人格が別人のようだ。


「てめぇわかってんだろうな!?」