振り返った凛と、目が合う。
永久凍土もびっくりな、凍りつきそうな目をしていた。


「アンタさっきから五月蝿い。」

凛がこの目のときはヤバい。
後から蹴りを入れられるかもしれない。


そういえば凛は、2年生にしてこの部活の部長なんだった。

「すみません…」

俺が縮こまると、

「あら凛ちゃん、ごめんなさいねぇ…」

「いいえ?
田中先生はなーんにも悪くないんですよ?
…綺麗な女性に囲まれてウハウハしてたこいつが悪いんですっ」

「あら凛ちゃんったら、焼きもち?」

田中先生というこの女性はほほえましそうにふふっと笑う。

「ちっがいますっ!」

真っ赤になった凛を見て、
ん?

焼きもち?


「え凛、俺に焼きもち!?」



「違うって言ってんでしょうが!」

「す、すみません…」

「あらあら、色男だけど凛ちゃんには敵わないのねぇ」

ニヤニヤしてる田中先生に、俺は苦笑を返す。
いやぁ、情けない。



「いや先生大体こいつはただ図体でかいだけです。
よく見えるだけですから。」

うぅ…そんな言い方しなくてもいいじゃないか、凛…。
確かに凛とは俺の熱烈な告白から始まったからな。

凛のことは大事にしているつもりだけど、
まだ好きになってもらえてないのだろうか。

……と、


「そう?私にはステキに見えるわぁ。
凛ちゃんにもじゃないの?」

やめてください先生、俺が傷つくだけですって。

そう思いながら凛を見ると、

「………ッ!」


真っ赤だった。


正直に言う。
このとき俺もつられて赤面してしまったんだ。
凛は見てたかな…。

もしかしたらいつか思い出した時、
またはたかれてしまうかもしれない。
でもそれも、俺には愛情表現に見える。
素直じゃない凛の精一杯の愛情表現。