もし私に光成を選ばないという自由があったら、私は朔良くんを選んだだろうか。
最低な私の脳内会議。

世界で一番好きになって欲しいなんて傲慢を吐き続けていた。そのくせ自分は誰でもかまわないとか言って。その考えは変わらないけれど、ふと立ち止まりそばにいる人を見る。

光成が私を世界から守るように立っていて、朔良くんが私を立ち上がらせようと手を差し出している。

私の将来は光成だと決まっている。それは私が望んだこと。大前提には必ず姉さんがいて、私の世界の至るところで姉さんは立ち塞がる。私の足を止める。何より怖いのはこの心臓が止まるときに、姉さんを一つも越えられないこと。この手に入れたもの全てが、姉さんの持つものに劣ること。そればかりに怯えていたから。ずっと私は姉さんの方ばかり向いていた。

だからふと気づいたとき、好きも恋も分からない自分に戸惑うのだ。それはどんなものだったか、貪るように求めていたくせになにか知らない。

衝動なの?感情なの?思想なの?熱量なの?質量なの?祝福なの?万有引力なの?劣情なの?

「恋っていうのは、魂乞いっていう呪いの儀式のことだよ。」

暗幕の内側、濃密な暗闇をスタンドライトでごまかして、何も答えられない私に若松さんは面白そうに解説した。

「自分自身である魂が相手の元にいてもつらくないと、奪われてもかまわないと思えたら恋ってことだし。奪い合うことも恋だとおもうけれど。」

「……」

私は今、誰を思うの?