そして幕があがる。

文化祭最後の劇。この時間が終わればもうあとは閉会式くらいしか残っていないから、客席には人が一気に増える。光成と二衣の宣伝も広まっていたようで、光成のファンの子がかたまる一角もある。光成と二衣が揃って出るというのはそれだけで宣伝として成り立つくらいだ。

その客席を覗いて、光成が笑った。

「みんな騙されにきてるよ、二衣さん」

「ざまあみろ。真実を見通せない愚かな人たち。あぁロミオ出てきた。」

「なんで、俺がロミオじゃないんだろうね。本当はいやなんだよ、二衣さんのためでも。だって二衣さんの番は俺でしょ?」

「…昨日若松さんにミツと朔良くんのどちらが好きなのって聞かれたよ」

「なんて答えたの…」

二衣は前をむいて舞台を指差す。それに光成は朔良と答えたのかと、一瞬息が止まりかけたが、すぐに違うとわかる。

「ほら、出番だよ」

二衣が指差した先に歩き始めた。光成もそれに従う。まばゆい照明の下へ。

(二衣さん、なんて答えたの?)

疑問があたまのなかでこだました。