光成の家につくと、トマトソースの匂いが漂う。今日はイタリアンかもしれない。
ちなみに光成は和食を全く作れない。得意なのはイタリアンの肉料理。
二衣の方はといえば、家の習い事として大体なんでも作れるが、好んで和食を作る。
キッチンに入ると光成が二衣に振り向いた。

「おかえり」

「ミツ、ただいま」

「ハンバーグだよ。トマト煮込み」

「形的にはミートボール。それ絶対楕円じゃないわ」

「材料は同じだから」

「あとどれくらいでできそう?お風呂入りたいんだが」

「…入ってきていいよ。まだかかるし、まってるから」

「悪いな」

二衣は一度部屋に戻り着替えを用意してから、浴室に向かう。キッチンに一人残された光成はサラダを作りながら、思考を巡らした。
二衣が風呂に入りたがるのは、大概光成以外の男と触れあったときだ。二衣は心こそ複雑怪奇に歪むものの、行動は実直で単純そのもの。

(問題は相手が誰なのか?ってことで。)

二衣は光成のもの。所有権は彼に属し、それは二衣の一生に渡って有効だ。