<光成 今日男子三人が
    ご一緒するからごはんよろしく>

 唐突に送られてきたメッセージに舌打ちした。着信わするが一向に出る気配がない。二度ほど留守電メッセージを聞いてから諦めて作りかけの二人前のご飯をかさましする。献立も増やさなくてはならないなと、苛立ちながらも準備を始めた。

 40分ほどすると玄関の開く音がして、いくつもの足音と驚くような話し声がする。

(大方家のでかさに驚いてるんだろうな)

 キッチンの扉一枚向こうから聞こえる声にバレないように静かに準備を続ける。このまま夕食を作り終えたら、来客たちと顔を合わせないように部屋へ閉じこもる予定だった。

「誰かいるの?スゲーいいにおいするんだけど」

「あぁ、お手伝いさんだよ。夕飯作ってくれてるから。みんな食べてくだろ」

「いいのか!?」

「ゴチになります!」

「いやー、スゲーなブルジョワ。」

「じゃあちょっと待っててね」

 リビングのドアが閉まる音がしてしばらくすると光成がキッチンに入ってきた。

「君は連絡が遅いよ。もっと早くに言うようにして」

「ごめん、怒らないで?ご飯ありがとね」

「部屋にいるから」

 一人分だけ別にしておいた食事を部屋に運ぶ。ついでに玄関へ行き乱雑に脱がされた靴を揃えておいた。
 そこではたと手が止まる。

(…相澤の靴と同じデザイン。)

 あの純粋で無垢な人を思い出して、クスリと笑う。

(まあ、いないよね…?)

 不安になりつつも部屋に入る。
 クラスも交遊関係も違うから、来るはずないと、リビングに思い馳せた。