と言っても、何もする事が無い。
ちらっとお姉さまの読んでいる小説を見た。

《黒い館の封印を解く為には黒い野いちごを潰したジャムを容器に入れ、女王のに渡す必要があります。》

何を言いたいのかさっぱりだ。
こんな物を読んで何が楽しいのか……

お姉さまに呆れたその瞬間、すぐ目の前を白いウサギがぴょんぴょんと通り過ぎていくのが見えた。
「うあー、急げ急げー……」

そのウサギは妙だった。
二足歩行で跳ねて居るし、金色の懐中時計を首から下げている。
そして何より……喋った。
この耳で確かに聞いた。急げ、と言っていた気がする。