月だけが見ていた


「行ってきまーす」


『その日』のわたしは
あまりにも、浮かれていた。



映画も楽しみだけど
久しぶりに、司くんとたくさんお喋りできる。

そう思うと、胸が躍った。



……早く早く、

早く会いたい。



膨らむ嬉しさに突き動かされるように駆けだした私は

すぐ横を猛スピードで通り過ぎる救急車にも、気がつけなかった。