月だけが見ていた

『何時からだっけ、映画』

「えっとね…2時!」

『じゃあ1時に駅で待ち合わせしよっか』

「うん!」


いつになく弾んでいる私の声を聞いて
そんなに嬉しいの、と司くんがからかう。



『何か俺も楽しみになってきたわ、映画。じゃあ明日1時な』

「うんっ。おやすみなさい」

『おやすみ。』



この電話が

司くんとの、最期の会話になった。