その瞬間 胸をナイフで貫かれたような 鋭い、痛みが走った。 「死」という壁が 私と司くんを、決定的に隔てている。 そして、それを自覚する度 私は、いつだって底無しの悲しみの谷へ吸い込まれてしまうんだ。 「……上原」 廊下の真ん中で足を止めた司くんは ふいに、私を抱き寄せた。 「ーーーごめん」 そっと 司くんの背中に腕をまわす。 「置いていって、ごめんな……」