そこに映っていたのは
紛れもなく17歳の私の姿だった。

今よりもほんの少し、頬の辺りに丸みがあり
胸まであるはずの髪が、肩の上で揺れている。

身につけているのは、淡いブルーのワイシャツに紺色のブレザー。
そしてチェックのスカート。
高校の制服だ。


「な?」


言葉が出ない私に笑いかけて
司くんは、私の手を握り直した。


「行こう。」




この場所に来ることは
もう、二度とないと思っていた。


でも、私は今

二度と会えないはずだった司くんと手を繋いで
誰もいない校舎内を歩いている。


「覚えてるもんだね、教室の場所とか」

「な。」


繋いだ右手にきゅ、と力を込めると
司くんもそれに応えてくれた。

肩が触れ合う。
目を合わせて笑う。


大好きだった人との、些細な幸せを噛みしめながら
17歳の二人は、ひたすら歩く。


この校舎に置いてけぼりにしてしまった思い出の欠片は
少しも色褪せずに、キラキラと光っていた。