「他人を見る余裕があるんだったら



――俺だけ見てろよ」



あたしを見つめてくる山下先輩の視線に耐えられなくなって



パッと下を見ると、思いっきり顏を両手で隠した。



かっこよすぎて。



まるで本当に山下先輩の彼女になれたような気がして。



もう山下先輩を直視できないよ。



「俺、先グラウンド行くから」



壁から手を離すとすぐに部室から出ようとする山下先輩、



そんな先輩の姿にみんなは冷かすようにスパイクを履いて「待てよ~!」と言いながら追いかけて行ったんだ。



こんな心臓が壊れてしまうくらいドキドキしちゃったことはサッカー部の部員にもフェンス越しにいつも練習を見に来る女子たちにも内緒。



今日もあたしの中で山下先輩の存在がちょこっとだけ大きくなった気がしたーーー。