田辺は慌てて俺から離れ服を正す
それを見て達也さんが吹き出していた
「いや、お前がそんな顔するなんてな…」
今回の事件で、いつもクールで乱れることのない田辺の印象は変わったという
「田辺さんね、怖い人だと思ってたの。けど。隼斗さんのこと、すごく心配して…私のことも気にかけてくれて……すごく心強かったの」
俺は沙希の頭をポンと手を置き
『田辺……礼を言う。これからも頼むな』
そう言うと田辺は深々と頭を下げた
『で……お袋、店は?』
「もー!大変だったんだからっ……」
お袋はプンプンしながら話し出す
俺が倒れてからの3ヶ月のこと
店は順調に進んでいるが、やはり若い子を雇った方が、もう少し客層が増えるんじゃないかと話を持ってきた
「……でね、隼斗がこんな状態だったし…沙希ちゃん一人にさせたくなかったし……ちょっとだけ、手伝ってもらってたんだよね……」
お袋が言いにくそうに言った
俺は少しイラつきながら沙希を見ると
「うん、楽しいの……隼斗さんの店で働けるし……何より、一人でいる時間が少ないから……辛さ半減したよ」
『そうか……』
沙希にそう言われると
イライラもどっかに行っちまう…