色々な花が飾られているが
小瓶に数本ってのが、あちらこちらにある


「お見舞い花が来るたびに、最後の1本まで、きちんと花のお世話をしてるからね」


『誰が?』



「ん?誰がって、瀧本さんの彼女じゃないのかな?」


彼女?


…………。



まさか、沙希が?



「いつも、この時間に来るから、もうそろそろ来るんじゃないかな?」



いつも?
毎日……沙希が見舞いに……



「ベッド、少しあげますね」



……そういえば、聡はどうしたんだ
晃は……どうなったんだ……


俺は辺りを見回したが
携帯とかはない。

家族に電話したって言ってたから
誰か来るだろう……


その時、誰かの話し声がする

「……そうなんです、楽しみです」

笑い声がする。
あー、この声……沙希の声だ


「若も喜びますね」


田辺か……
なんだよ、あいつら
いつの間に仲良くなってんだよ


ガラッとドアが開き

「隼斗さん、おはよう。入り口で田辺さんにばっ…た、り……」


沙希は俺の姿を見て手に持っていた荷物を落としてしまった


「沙希さん、どうしました?」


田辺が沙希に近寄り、俺の姿を見た



『おはよう…沙希』



俺の言葉に沙希の目は涙であふれていた



『沙希……おいで』


沙希はゆっくり、少しずつ俺のほうに向かってくる
俺の手を震える沙希の手を握ると
沙希を引き寄せ、抱きしめた