「藍。」



名前を呼ばれる。



「藍が好き……好きだよ。誰にも、渡したくない。」



初めて彼の口から聞かされた、〝好き〟の2文字。


わたしがずっと、求めていたもの。



わたしも好きだよ、三木くん。


誰よりも、三木くんが好き……。



……だけど


「三木くん……わたしは、先生だから……。」



三木くんとは付き合えない


……そう、言葉を続けようとしたのに。



「関係ない。」


「へ?」



三木くんはぎゅっと、わたしを抱きしめる。



「教師と生徒の前にオレたち、〝オンナ〟と〝オトコ〟だよ?」



「藍の気持ちを、聞かせて。」



もう彼は、わたしを〝先生〟とも呼んでくれない。


何度も何度も、わたしを名前で呼ぶ。



あんなにも憧れた、先生呼びだけど。



「藍。」



今は、彼の口から呼ばれる自分の名前が、何よりも愛おしい……。