ねぇ、ハル。
 もし、あの日に戻れるとしたら、
 私があの場所に行っていたら、
 何かが変わっていたのかなー

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4月8日は、ハルの命日だ。

「もー桜ってば!ちょっと待って。
相変わらず歩くの早いんだから」

「……早苗」

振り向くと、息を切らせた早苗が脇腹を押さえて立っていた。

「あれ?青葉君は連れてこなかったんだ」

「朝から遊園地行きたいってごねちゃってさ〜旦那に頼んで来たわ」

「そっか。もう3歳だっけ」

「そう!やんちゃ盛りで本当に困っちゃう」


長い石段をのぼりながら互いの近況報告をする。
私たちは中学校の同級生で、
こうやって1年に1度、ハルの命日に集まっていた。

石段を上り終わると、
小さな神社にたどり着いた。
ここが、私たちとハルの思い出の場所。


「お〜、桜、早苗、来たか」

「佑司!あんた変わってないね〜」

「痛っ!早苗、お前は相変わらず凶暴な女だな。これでもこの神社の18代目なんだからな」

「はいはい、あんたの代でつぶさないように気をつけてね」


早苗と佑司がじゃれ合うのもいつものことだ。
そしてここにもう1人ー

「悪い、遅くなった」

「湊!良かった。来れたんだ」

「ああ。今朝NYから帰って来た。久しぶりだな、桜、早苗」

「って俺は?!」

あの時と変わらない笑い声に包まれる。
その声に反応したように、ピンク色の花びらが舞った。

ハルが笑っているような、気がした。