ーーーー昼休み。
ピーーンポーーンパーンポーン
「至急連絡します。神田隆斗、赤沢波菜。神田隆斗、赤沢波菜。今すぐ職員室、担任のところまで来てください。繰り返します……」
嫌な予感しかしない。
俺は放送を聞きながら購買で買ったおにぎりを食べる手を止めた。
「ほら、呼ばれてるぞ隆斗?」
「知ってるわ。てか行きたくない。お前行ってこいよ」
「やだよーん。俺まだ食い終わってねーし」
俺だってまだだよ。
でもさぼるのももっとだるくなりそうだな。
仕方ない、行くか。
えっと……赤沢さんは……
「あれ、」
もういない。
「なあ、赤沢さんってもう出てったのかな」
「もちろんそうだろ!お前と一緒に職員室まで行くなんて、神様が許してもこの俺が」
「お前の許可は必要ない」
「おいおい!最後まで言わせろよ!!」
悔しそうに叫ぶ怜太の声を背に、俺は職員室へと向かった。
怜太におにぎり、食べられてないといいけど。
ガラガラッ
「失礼しまーす」
職員室の扉を開けると待ってましたと言わんばかりの勢いでパシリーがこちらに歩いてきた。
その後ろには、赤沢さん。
パシリーが手に持ってるものは……ホチキス?
「神田、さっそくだが、ちょっと着いてきてくれ」
「…はあ」
………そうか、なるほど。
さっそく今日から、パシリーにパシられるのか。
……ていうか、女神やら天使やらと学年中の男子から噂される赤沢さんにこんな大量のプリント持たせて…。
パシリー、恨まれるぞ。
「……プリント、俺が持つよ」
「え!?い、いいよ!大丈夫!全然運べるよ!」
「いいからいいから」
赤沢さんからプリントを半ば強制的に受け取り、俺は再び歩きだす。
……お腹………空いた。
「いやー本当に悪いねえ。俺午後から出張でさあーー放課後、このプリントホチキス止めしてもらえると助かるんだよねえー。この教室使っていいからさー」
パシリーは生徒をいじめるのが相当好きなようだ。
「じゃ、よろしくねえ」
………え、いや、あの。まだ、うんともすんとも言ってないんですが。
「神田…くん。放課後、予定あったりとか…」
あれだろ。どーせパシリーの中ではもう決定事項なんだろ。
だったら早く終わらせて帰ってやるよ。
「ない」
パシリーのパシリ地獄ぐらい耐えてみせるぜ。


