「………げ」
久しぶりにこんな声を出した。
ありえない。ありえないぞ。
俺は今まで、運だけは強かった。つまり、強運だった。
そんな俺の手に……
なぜ、当選おめでとう!の文字が見えるんだ。
「うわ!お前学級委員じゃん!!」
幼馴染みの山田怜太(やまだれいた)が俺のくじを盗み見したらしく大声をあげる。
「………嘘だ。幻覚だ」
「幻覚じゃないだろー。ほら、ここに書いてるじゃ…」
「お前は黙ってろ」
俺は今、心の整理をしているんだ。
…………何が悪かったんだろう。
何で強運の俺が、学級委員を決めるあみだくじで当選してしまうんだろう。
いや、強運だからか?
だから当選したのか?
……誰かに取り換えてもらえないかな。
いや、無理か。
学級委員に立候補をする人がいなかったからあみだくじになったんだし。
……くそ最悪。
しかも担任、生徒パシることで噂の笹松じゃん。
去年、笹松のクラスのやつが相当パシられたって聞いたぞ。
……ついてないな。
俺は、当選おめでとう!と書いてあるくじを握りしめた。
「じゃ、男子学級委員は神田くんねー」
なに!?
突然聞こえた声のほうに視線を持っていくと、クラスの女子が俺の名前を記入していた。
誰だよ!俺の許可なく勝手にチクったやつは!
「あ、隆斗報告しといたぞー」
怜太、お前を後で牛裂きの刑に処す。
「そう睨むなよー!これも宿命だと思って受け止めろ!」
そうか、ならそのニヤニヤした顔をやめろ。
「それに女子学級委員が美人かもしれねーじゃん?」
そういう問題じゃねーよ。
美人でも嫌なもんは嫌なんだよ。
きゃーーー!!!!
教卓の前に集まり、興奮気味の女子達。
もう女子もくじ引いてんのか。
どうせなら仕事出来そうなやつがいいな。
「女子学級委員決まったかー?」
「……はい、私です」
女子学級委員も決まったらしく、黒板には俺の相方になるであろう女子の名前が書かれようとしていた。


