わたしが部活にいくまでのわずかな時間に、必死になって高野先生を探した。
6組に行けば居んだろ。と古谷が言ったし、わたしだってそう思ってたけど。

「高野センセー?あ、いないよ?」

って言われたときには古谷の舌打ちが聞こえてきそうだった。

「あとどんくらいなら大丈夫?」
6組じゃないなら職員室だな、って古谷が賢い分析をして、
わたしは職員室にいくために階段を降りている。
「5分…かな」
「そっか、もしもこれで先生がいなかったら、俺がお前の手紙渡しとくな」
「うん」
本当は自分で渡したかったけど、
こういうのは当日じゃないとダメなんだ。
そもそも、何度も何度も挑戦して渡せなかったわたしがダメなんだけど。


「あれ、先生じゃねえ?」
古谷はめざとく先生の姿を見つける。
これから渡すんだって考えただけで
尋常じゃないくらいの緊張が大きく波打つようにしてわたしの体に広がっていく。

先生!って走っていくと

おお、どうした?珍しい組み合わせだな?

ってキョトンとした先生がいて

はいこれ、誕生日おめでとうございます!

二人からの手紙を受け取った先生は

嬉しそうに微笑んで

ありがとう。

っていうんだ



古谷に返事する前の数秒でわたしは―ある意味―素晴らしい創造力をはたらかせてしまって。
バカみたいにてれてしまった。
そんなことを知るよしもない古谷が
「えっ藤崎?」
とフリーズしたわたしの顔を覗き込む。
「ごめん、古谷。わたしもういかなきゃ」
「は!?お前っ先生に渡すんじゃないのかよ!」
「渡しといて!!」
強引に手紙を古谷に渡すと。

「おいっ!!」
「っ!」

逃げ出すようにして階段を駆け降りた。