ときは流れて

1年生にとって最初の中間テストが終わった6月も終わりの頃。

わたしたち、1年4組の中間テスト明けの最初の理科の授業は理科室で実験だった。


「藤崎イー、」
理科室の前の廊下に寄っ掛かって一緒に先生を待機していた沢田小夏(わさだこなつ)が声をかけてくる。
沢田とは中学からの友だちだけどすごく仲よくなった。
お互いを名字で呼ぶところも私たちらしくていい。
「なに?沢田」
「先生遅くない?」
「あー、確かに」


わたしたちの理科の先生は高野浩幸(たかのひろゆき)という。
真面目だけど面白くて、授業を受けていて楽しい。
そんな先生は二児のパパで、しかもまあまあかっこいい。
だから結構人気のある先生だ。
わたしも、まあ好き。


「遅くなってごめんなー!」
ちょっと急いで階段を降りてきた先生にわたしたちは「おはようございまーす」とかえす。
鍵を開けてる高野先生を横目に沢田がまた話しかけてくる。
「高野先生さ、声が元に戻ってるよね?」
そういえばこの前のテスト返しのとき、声かれてたな。
「あー。確かに!でもわたしは前の声の方が好きかなー」
「あははっ、まあわからなくもないかな」
「でしょ?頑張って声出してた感じがよくない?」
「なにそれマニアック!!」



そんな冗談半分で言ったのが悪かったのかも知れない。
その日の実験は妙に頭にはいらなくて。


ほんと、おかしかったのかも。

やけに先生がかっこよくみえた。