「5年間頑張って、初めて主役になれたのは努力が報われたなぁ~っていう感じで嬉しかったけど、それ以上にどうやって演じればいいのかっていう不安でいっぱいだった。」
7年間バレエを続けているお姉ちゃんでも、不安に思ったり、悩んだりすることがあったのだと、初めて知る。
「だから、頑張ったよ。ビデオを見たり、本を読んだりして、とにかくオデットとオディールの気持ちを理解しようと、がむしゃらに頑張った。」
「足に血豆ができて、ボロボロになって、全身に生傷が絶えなくて、お風呂に入るとしみて痛くてしょうがなかった。」
白鳥はただ優雅に美しく水面を泳ぎ、私達はそれを美しいと感じる。白鳥は水面下で、足を必死に動かし続けているのを知らずに。
お姉ちゃんは必死で足を動かし続けて、白鳥であろうとした。
そこには確かに、お姉ちゃんの見えない努力と、見せない思いと、見せられない涙があった。
「立って拍手してる、真希が見えた時はちょっと泣きそうになったよ。舞台の上だったから泣くわけにはいかなかったけどね。」
「ねぇ、もうちょっとバレエ頑張って続けてみない?頑張ってれば、きっと真希にとっていいことがあると思うよ。」
「・・・うん・・・うん。」
膝を抱えたまま、顔を隠して静かに泣いた。

