「真希?さっきから黙りこんじゃって、どうしたの?」
お姉ちゃんの言葉が、私の昔を思い出す作業を中断させた。リセットする為に大きく息を吸って吐く。
「・・・お姉ちゃんはいいよねぇ。勉強もできるし、バレエでは主役だし、うらやましいよ。」
リセットする為に大きく吸って吐いた息は、私の感情は上手くリセットさせることができず、溜め息と呼ばれるものになってしまった。
3つ上のお姉ちゃんは、私と違って、勉強もスポーツも何だってあっさりこなしてしまう絵に書いたような優等生だ。
正直、凄く羨ましかった。羨ましいっていう感情の他に憎らしいっていう感情が生まれるくらいに。
同じお母さんの子どもなのに、どうして私だけこんなにダメダメなんだろうって、悩んで苦しむ時もあった。
「そういえば、真希が初めて私のバレエを見にきてくれたのは、2年前の白鳥の湖だったね。」
お姉ちゃんが、草むらに転がっている小さな石を拾って川に投げ込んだ。川まで届いたかどうかは暗くてわからなかったけど、石が水を弾く音がするから、見事川まで到達したのだろう。
「あの頃の私は、何したらいいのかさっぱりわからなかったなぁ。」
「・・・え?」
うそ?あんなに綺麗に格好良く踊っていたお姉ちゃんが迷ってたっていうの?

